(2021.1.31 14:27追記:この記事はマイナンバーカードを使った電子申告を前提にしているので、ID・パスワード方式で確定申告したい人にはあんまり役に立ちません)
はじめに
今年も確定申告の時期になりました。
2020年は技術書典8疲れから4月になってから申請したのが記憶に新しいところです。会計を締めるまでには時間がかかりましたが、freeeが国税庁のe-Taxサービスに電子申告用バイナリデータをアップロードしてくれるmacOSアプリを用意してくれていたおかげで、e-Tax自体はとてもすんなり行きました。
2019年ごろの記憶だと、国税庁が用意してるe-Taxワークフローがなかなか面倒だったので、これだけでも革命的に楽になりました。(最近は楽になってきたらしいタレコミをいただいたので、追記 しておきました)
2021年からはスマホで電子申告
さて、年も明けたし早めに会計を締めておこう、と思った矢先に、freeeから新しいプロダクトのアナウンスがありました。
www.itmedia.co.jp
macOSアプリに引き続き、スマートフォンアプリでの電子申告もサポートしてくれるようになります。これはかなりユーザー側の負担が減る作りになっていて、従来とは次のような違いがあります。
電子申告ファイルのアップロード方法
認証方法
必要な道具
2020年まで
デスクトップアプリでfreeeからダウンロードした電子申告ファイルをe-Taxにアップロードする
パソコンにカードリーダーを接続してマイナンバーカードを読み込ませて認証する
パソコン、マイナンバーカード、カードリーダー
2021年から
スマートフォンアプリで freeeからダウンロードした電子申告ファイルをe-Taxにアップロードする
スマートフォンに直接 マイナンバーカードを読み込ませて認証する
スマートフォン*1 、マイナンバーカード
なんとカードリーダーが不要になりました。カードリーダーを買い換えたところなのになんてことをしてくれるんだ!最高じゃないか!!
特別定額給付金のときに技術的には可能であることが示されていた
2020年の春に特別定額給付金が配布された際には、マイナンバーカードの電子証明書を利用してマイナポータルにログインできた人からの申し込みを優先的に受け付ける制度になっていました。その際にリリースされたのが、マイナポータルAPというアプリです。
play.google.com
apps.apple.com
これらのアプリは政府側で用意されたものではありましたが、技術的には政府が独占的に利用できるものではなさそうでした。AndroidやiOSのICチップ読み取り機能を利用してマイナンバーカード内のデータにアクセスし、公的個人認証サービスの公開された技術仕様 に則ってユーザーからの暗証番号を利用していたはずです。
e-Taxの電子申請でも、同様の電子証明書による電子署名を施した上で申請ファイルのアップロードを行う必要があり、従来はこの部分にパソコンとカードリーダーが必要になっていました。これがスマートフォンで代用できることになれば、e-Taxが楽になりそうだと、当時の私も期待していたようです。
今年から利用できるようになったfreeeの電子申請アプリは、これに近い内容を実現してくれたことになります。やっほう。
実際にやってみた
※ 将来、内容が変更になる可能性があります。公式に解説されている手順についてはfreeeヘルプセンター の「【iOS】アプリで所得税の電子申告を行う 」を参照してください。
それでは、実際に申告が終わるところまでやってみたので、手順を追ってみましょう。まずは普通に「確定申告書類の作成」機能でデータ入力を済ませておきます。
申告データを最後まで作っておく
次に、電子申告に使うデバイスとして「スマートフォン」を選択します。
スマートフォンによる電子申告を選択する
「パソコン」を選ぶとカードリーダーが必要になる旨が表示されますが、今回は利用しません。バイバイカードリーダー。
「電子申告に必要なアプリのインストール」で案内されているアプリは事前にスマートフォンに入れておきます。私はメイン機がiPhoneなのでApp Storeからインストールしました。
さて次です。e-Taxの利用者識別番号*2 やマイナンバーを入力したら、提出する書類の確認を行います。
提出物を確認して、電子申告アプリを起動する
確認したら、「電子申告アプリを起動する」のボタンを押します。すると、ここまでにまとめた申告内容をスマートフォンの電子申告アプリに引き継ぐためのQRコードが現れます。
電子証明書の登録コードをスマートフォンで読み取る
確定申告のデータ入力をパソコンから行っていた場合は上記のQRコードをスマートフォンのカメラアプリで読み取ることで、電子申告アプリに移動します(直接アプリを開いても何も起こりません)。スマートフォンからデータ入力を行っていた場合は、電子申告アプリに直接移動します。
スマートフォンではQRコードが出ずに直接アプリが開く
ここからは電子申告アプリの操作になります。
勝手にログインしてくれるわけではないので、電子申告アプリにもfreeeのアカウントを入力しましょう*3 。ログインすると、確定申告書類データのダウンロードが始まります。そして、ダウンロードが終わると、マイナンバーカードとe-Taxの2種類のパスワードをそれぞれ求められます。
マイナンバーカードのパスワードとe-Taxの暗証番号を入力する
両方入力すると「マイナンバーカードの読み込みへ」のボタンが有効になるので、マイナンバーカードを用意しておきましょう。
ここで「5回パスワードを間違えるとICカードがロック」と言われるのはかなり怖いですよね。「マイナンバーカードの署名用パスワード」も記憶に自信がありませんし「利用者識別番号に紐づく暗証番号」のほうもよく思い出せないので、両方のトライアンドエラーをするとなると5回以内で終わらせる自信がありません。
ここで朗報です! 先にトライアンドエラーの回数に制限がない「利用者識別番号に紐づく暗証番号」のほうがチェックされて、そちらが通るまではマイナンバーカードのパスワードはチェックされません。心ゆくまで試しましょう。そして「利用者識別番号に紐づく暗証番号」が正しいことが確定してから、マイナンバーカードのパスワードにチャレンジしましょう。画面の指示に沿ってカードを読み取るだけです。ここは小細工なしで5回までしか試せないのでみんな頑張って……(最後は気合)
2つのパスワードが無事に通ると、送信が実施されますので、しばらく待ちましょう。次の画面が表示されたら、電子申告アプリの今年の役目はおしまいです。お疲れ様!
送信完了!
ここからはfreeeの「確定申告書類の作成」機能に戻ります。
下に進むとe-Taxの申告結果を確認できます。先程アプリで利用した「利用者識別番号に紐づく暗証番号」と同じ暗証番号を入力して「受付結果の確認」ボタンを押しましょう。
受付結果を確認する
「受付完了」が表示されていたら、e-Taxの提出作業は完了しています。やったね!!!!
本当に楽だった
カードリーダーとパソコンの相性問題などの困らされることなく、シュッと電子申請を実施できました。ありがとうfreee。これからも使い続けるよfreee。ここまで体験が良いと多少の値上げは許容してしまうよfreee。
まだ一度も使っていないカードリーダーはメルカリに流すことにします。ありがとうさようならカードリーダー。(怖いので旧カードリーダーは手元に残しておきます)
多少手間でもe-Taxにしたほうが総合でメリットが大きいと判断して3回目?の確定申告が終わりましたが、金銭的なメリット もさることながら、古臭いと言われがちな行政周りの手続きが少しずつ技術の力で改善されていく様子を見られるのは、なかなか楽しいですね。来年もe-Taxやっていくぞ!!!
確定申告お疲れ様でした!
2021.1.31 11:00追記:マネーフォワード クラウド確定申告
私はfreeeユーザーなのでfreeeの話をしましたが、マネーフォワードにも同様の機能がありそうです。すでにマネーフォワードを利用している方は、こちらにチャレンジしてみてください。
biz.moneyforward.com
2021.1.31 14:14追記:普通のe-Taxも改善してきているらしい
freeeやマネーフォワードなどのサードパーティな業者を通さずに、政府・行政が用意したシステム(e-Taxウェブサイト、マイナポータル、マイナンバーカードなど)だけでe-Taxを行う方式も改善してきているというタレコミをいただきました。
実際にやってみた方のご意見を伺ったところ、ルート証明書インストールといった一般の方には複雑そうな手間は少なくなってきているようでした。
これはこれで素晴らしいことなので、「昔より楽になってたぞ!えらいぞ国税庁!」というパッションが高まった方は是非とも記事を書いてみていただければ読みたいです。